研究道具箱 カードと研究
研究概要
最新の科学技術に触れて学ぶ工学教育
どんな研究?
工学リテラシーとは、単に工学や科学技術を使う素養というよりも、それらの社会的意味や社会的役割も踏まえた上での科学技術のリテラシー(知識やの能力を活用する力)のこと。予測困難な未来社会をデザインし、技術革新や知的創造のできる人材を育てるために必要な力です。工学リテラシー教育の具体的な活動としては、理系と文系の学びを融合した「STEAM(Science, Technology, Engineering, Arts, and Mathematics)教育」の普及を目的とした出張授業やワークショップなどを行っています。また、教育用インターフェース(情報をやりとりする機能)の開発や、デジタルコンテンツ開発、評価のためのデータ分析および手法の開発などついての研究開発もしています。
日本の場合、理系と文系の区別が中学、高校から始まり、大学だけではなく社会人になっても続きます。しかし、産業構造が大きく変わりつつある現在、理系、文系に分断されたままでは解決できない社会的課題が増えています。理系であっても文系を理解する、文系でも理系を理解する、そういった広い視野を持つことで社会を基盤から変えていくことができます。中学生、高校生向けの工学リテラシー教育では、理科だけでなく社会や数学、国語などさまざまな科目を横断して、学習していく機会やプログラムを提供しています。STEAM教育のAの部分はアートとリベラルアーツと考えています。社会科学や人文科学という形で社会と繋がり、学習した知を具現化しようとする素養が必要になります。
将来はどうなる?
工学リテラシー教育やSTEAM教育の成果が社会に認知されるには20年や30年はかかるでしょう。例えば、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)プログラムを考えてみます。約20年前に始まりましたが、ようやく最近になって、当時SSHに通っていた子供たちが社会に出て活躍したり、研究者になったりするなど成果が目に見えるようになりました。
現在、女子は理系に、男子は文系に進みにくいなどいろいろな社会的制約あります。将来、工学リテラシー教育やSTEAM教育が普及し、理系、文系という垣根が低くなれば、好きな勉強を自由にできるようになるでしょう。また、ダイバーシティやインクルーシブな社会になっていくと、個人の能力を評価する軸もたくさん必要になります。今の中高生にはとにかく、いろいろなことを学び、広い視野を持ってほしいと思います。現行の教育制度の中だと、いろいろな分野の勉強ができるのは高校生が最後です。たとえ強制的だとしても、つまらなくても、授業の内容が心の引き出しに残り、将来、自分の専門との関連に気付く時が来るかもしれません。