研究道具箱 カードと研究
研究概要
災害からまちを守る人を育てる
どんな技術?
地震のような自然災害は、社会にとって大きな脅威です。「災害対策トレーニング」の目的は、災害からまちを守る「災害対策本部」などで、適切に行動できる人を育てることです。全員が納得できる正解がない中、刻々と変化する状況に応じて柔軟に方針を決め、行動を起こせるよう、多様な知識を学びます。
例えば、災害対策基本法や災害救助法など、関連する法律についての知識は、各所と連携して素早い行動をとるために欠かせません。また、先を読む力や人の心理を踏まえて情報を出す工夫も重要です。災害対策には、「想像力」や「決断力」、「表現力」や「傾聴力」など、幅広い力が求められるのです。
「災害対策」と聞くと、災害後に取るべき行動と考えがちですが、それは「災害対応」。災害対策の究極の目標は、事前に準備することで災害対応がいらなくなる状況を作ることです。そこで、災害時に必要な業務を、事前にフローチャートとして作成しておくことができる、「BOSS(災害対応工程管理システム)」というシステムを開発しました。まずは避難所運営を進め、次に物資の配給に着手し、そのあと家屋の調査に入るなど、災害発生後の時間軸に沿って、約500個もの「やるべきこと」が並びます。現在、全国の約40の自治体や高齢者施設に導入されています。
将来はどうなる?
災害に強いまち、国を作らねばなりません。地震などの自然現象が襲ってきたら、命・家・金(生計手段)の確保が大切です。
災害に弱い社会とは、他者に頼って人々が生きている社会。私たちは、科学技術や公的なサポートなどに頼って生きていますが、災害はそのつながりを一瞬にして断ち切ってしまいます。緊急時に、水やエネルギー、食糧などを自分でなんとか確保できる環境を、常日頃から作っておくべきです。高齢化が進む現状を考えれば、高齢者施設の災害対策を進め、強靭なライフラインを構築しておくなど、長期的な国土計画レベルでの備えも必要です。
命を守るとともに、まちの復興や環境への配慮も、災害対策に盛り込まれることが必要です。大地震で生じる災害廃棄物処理は、復興を妨げます。「南海トラフ地震」では東日本大震災の約10倍、「首都直下地震」では約3倍の量の災害廃棄物が発生すると予想されています。
最近、SDGs(持続可能な開発目標)が注目を集め、多くの人が「自分の行動が、環境保全につながる」と考えるようになりました。将来は、災害対策においても、「この行動で、災害廃棄物を減らそう」という意識が根付いているかもしれません。