研究道具箱 カードと研究
研究概要
その場ですぐにデータを分析
どんな技術?
情報化社会ではビッグデータを有効活用して、高齢化・労働力減少・環境問題などさまざまな社会課題を解決することが求められています。しかし最近、その場でデータを取ってインターネットを通してデータセンターに送る、スマホやパソコンなどのデバイス(エッジデバイス)が急増したため、データセンターがさばける情報量の限界を越えようとしています。この問題を解決する救世主が、「コンピューティングインメモリ」です。
この技術を搭載したエッジデバイスは取得したデータをその場で分析し、必要なデータだけをデータセンターに送るため、通信量を大幅に減らすことができます。今ある通信技術を使って、AI(人工知能)を使いこなすための大量のデータをやりとりすると、全体の通信速度が落ち、大量の電力を消費してしまいます。この問題を解消するため、世界中の研究者が、メモリと演算を一緒に行う「コンピューティングインメモリ」を可能にする集積回路の開発にしのぎを削っているのです。
将来はどうなる?
コンピューターの心臓部を担う新しい半導体が実用化されるには、研究開発が始まってから10年はかかると言われています。「コンピューティングインメモリ」の研究開発が盛んになったのは2015年頃。2030年くらいには、エッジデバイスにもなる「ラズベリーパイ」(プログラミング学習用によく使われる、小型コンピューター)などに使われる日が来るかもしれません。
将来的には、「コンピューティングインメモリ」を登載した1センチ角ほどの超小型デバイスがいたるところに配置されるようになるでしょう。例えば、工場などの空間をカメラや加速度センサーなどで丸ごとセンシングし、その場で分析したデータをデータセンターに送り出すようになるでしょう。インターネット上に工場が再現され、遠隔地から現場の様子が分析データともにわかるようになるのです。そのためには、デバイスごとに電池を交換したり、充電したりする手間とコストを省く必要があります。環境からエネルギーを取り出す「エナジーハーベスティング技術」の開発も同時に進むことが重要です。