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AI(人工知能)が大躍進。仕事が奪われる!

#会社編

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専門家解説

JunyaInoue

東京大学
生産技術研究所
物質・環境系部門
教授

井上 純哉

Junya Inoue

専門分野:鉄鋼冶金インフォマティクス

WEB

どんな研究をしているのですか?

新しい金属材料を開発しています。自動車部品など工業製品の開発現場では、これまでの材料では満たせない特殊な性質(強度、加工性、破壊靭性、疲労強度、コストなど)をもった材料が常に求められています。例えば、軽い上に充分な強度があるアルミ材料がほしい、という具合です。井上研究室では、材料内部のナノ・ミクロな構造を考案し、その構造を生み出す金属加工のプロセスを、実験やシミュレーション、AIを使って導き出しています。単純な例で言えば、材料を熱してから延ばすのと、延ばしてから熱するのとでは、構造も性質も大きく変わります。無限にあるプロセスの組み合わせから、最適な手法を探すのです。

実際に「AIに仕事が奪われる!」は起こるのですか?

最近は、アルファ碁や顔認証などAIの応用先に注目を集めるものが多く、最新技術のように捉えられがちですが、手法自体は昔からありました。AIはじゃじゃ馬で、うまく設計しないと期待どおりに動いてくれません。使いたい条件ごとに最適化する必要があり、AIがなんでもできるという状態からはほど遠いのが現状です。しかし、最適化が進めば、AIが肩代わりできる仕事も増えていくはずです。
一方、AIには弱点があります。人間の価値観や美意識など、常に変化していくものには追い付けません。固定化された概念や自然法則はモデル化しやすく、AIが力を発揮できるのです。

今、進めている研究は?

「マテリアルズ・インフォマティクス」です。従来は、伝統工芸のように技術者が自分の経験と勘を頼りに膨大な試行錯誤を経て、加工のプロセスを組み立ててきました。経験や勘は明文化しづらく、共有できない暗黙知として個々の中に蓄積されていくだけでした。これからは、過去の実験データや新たな計測値に対して機械学習をほどこし、先人たちの思考回路をモデル化し、効率的に新しい材料を探索する時代です。経験の浅い若手研究者も、すぐに第一線で開発に参加できます。日本の材料開発・冶金の歴史は長く、多くの天才たちにより地道な研究開発が積み重ねられてきました。蓄えられた豊富な実験データと、冶金学の知識やノウハウは日本の強みです。
井上研究室では、技術者の思考回路をコピーする「デジタルツイン」技術、蓄積された膨大なデータを最大限利用する「データ同化」技術、暗黙知を定量化・形式知化する「スパースモデリング」技術を活用し、新たな材料を探しています。

今後の展望は?

実は、「AIに仕事が奪われる」と正反対の状況が、研究現場では起きています。昔に比べ、材料開発に関わる研究者や技術者が減っているのです。AIとはさみは使いよう。計算が得意で疲れ知らずなAIをとことん使い倒し、少ない人数で世界の材料開発という激戦区に挑んでいきます。