研究道具箱 カードと研究
研究概要
高速な画像解析と動作制御で、人を超える
どんな技術?
今や身近な存在となったロボット。工場で製品を作ったり、家庭内で掃除を行ったりと、活躍の場を広げています。ロボットは従来、複雑で繊細な作業ができること、なめらかな動きができることなど、人と同じように動くことを目指して開発されてきました。
「高速ロボット」は、速さにおいて人を超えることを目指したロボットです。鍵となるのは、「見る」「解析する」「動く」の性能。人は、1秒間に30コマ以上の画像がつながると動画として認識しますが、高速ロボットは、カメラを通して1秒間に1,000コマの画像を取得します。「見る」力は人のおよそ33倍に増強されています。次に、対象の動きを細かく見て、連続する画像データから対象の周辺部分だけを切りだし、情報を減らすことで「解析する」速度を上げます。最後に、モーターの回転速度の限界に挑戦し、現在のところ、人のおよそ3倍の速さで「動く」ことができるようになっています。すべてをあわせると、人の100倍の速さに迫ります。
人工知能を駆使したロボット制御も飛躍的に研究が進んでいますが、高速ロボットとはコンセプトが大きく違います。人工知能ロボットが、事前に大量のデータを学習し、変化を予測して動くのに対し、高速ロボットは、その場の変化をリアルタイムに捉え、変化に合わせて自分の動きを変えます。予測困難な状況でも、臨機応変な対応ができることが、高速ロボットの強みです。
将来どうなる?
今は、人がロボットに配慮しながら動いていますが、高速ロボットが人の動きをきちんと捉えて反応できるようになれば、共同作業がスムーズになります。さらに、省エネにも貢献します。現在、工場では、ロボットが製造物を認識して作業しやすいように、製造ラインの動きを調整しています。しかし、ロボットが製造物の流れに合わせて素早く動ければ、ラインの制御にかかるエネルギーを省けます。また、車に搭載すれば、飛び出しを察知し、速やかに停止させることもできるでしょう。人を超えるロボットは、さまざまな場面で力を発揮します。