研究道具箱 カードと研究
研究概要
身の周りのわずかなエネルギーを電力に
どんな技術?
エナジーハーベスティングは、照明や機械、道路など、身の回りで生じるわずかな振動や熱、電波などを収穫(ハーベスト)して電力に換え、活用する技術です。定期的な交換が必要な電池に依存せずにセンサーをほぼ恒久的に動かせる、新たなエネルギー源として注目されています。
振動を電気に変えるエナジーハーベスタの心臓部は、エレクトレットと呼ばれる部品です。櫛の歯状の部分に静電気を溜めて周囲に電界を作り、振動が伝わると発電(静電誘導発電)するしくみです。
エレクトレット型MEMS振動エナジーハーベスタは、コインほどの大きさで、取り付けた自動販売機や冷蔵庫などのモーターの振動を利用して発電します。取り出せる電気エネルギーは、まだ約1mW(ミリワット)と小さく、LEDは点灯できますが無線発信には少し時間をかけて貯めないと足りない程度。センサーなど低消費電力のデバイスに応用すべく、開発が進められています。
将来はどうなる?
大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)の開発が進み、パソコンやスマートフォン、ゲーム機など、電子機器の小型化・省電力化が進み、虫眼鏡でようやく見えるコンピュータも現れています。将来は、エナジーハーベスティングで得られた電力を使って自律的に動く電子機器が、身の周りにあふれる暮らしがやってくるでしょう。
考えるべきは、センサーやコンピュータに囲まれて、何を実現させたいか。医療や流通管理、インフラ診断など、社会課題の解決に期待が集まる一方で、私たちの遊び心をくすぐるアイテムも次々に生まれそうです。魔法の杖のように、振ることでさまざまな電子機器を操るコントローラや、持ち上げるとしゃべり出すコーヒーカップ、客のつぶやきに聞き耳をたてる商品など、エナジーハーベスティングの使いみちは、発想次第でいくらでも広がります。