ピンチ アーカイブ

世界的に感染症が大流行

#日本・地球編

GOOD回答例

いっすー

10代・女性・東京

使用カード:

  • ホログラフィックメモリー
  • Beyond 5G
  • 都市のデジタルツイン
回答

「Beyond 5G」で情報をいち早く共有し、「ホログラフィックメモリー」に情報を集め、その情報を駆使して「都市のデジタルツイン」で今の感染状況とこれからの感染状況の予想を立てることで国民がとるべき感染対策を示し、行動することで拡大を抑える

専門家解説

NaomichiHadano

東京大学
生産技術研究所
基礎系部門
教授

羽田野 直道

Naomichi Hadano

専門分野:量子熱・統計力学

WEB

どんな研究をしているのですか?

感染症の拡大、株価の変動、地震など、身のまわりの現象は、多くの要因(自由度)が絡み合って起こります。羽田野研究室ではそのような多自由度系を抽象化したモデルをつくり、統計力学、場の理論、計算機シミュレーションなどの手法を使って、現象を理論的に再現してみせようとしています。現象を起こす要因を推定し、今後の変化を予測することに役立ちます。

どうしたらこのピンチを回避できるのでしょう?

ウイルスとの接触機会を減らす、感染の検査を徹底的に行う、ワクチンや治療薬を開発するなど、さまざまな対策がもちろん大事です。その基盤として、今起きている現象を理解し、今後感染の抑え込みに効果的な行動を予測するために、数理モデルが役立ちます。
簡単なモデルとして、「感染していない人」、「感染したけれどまだ隔離されていない人」、「感染が確認され隔離された人」の数が、どのような関係で増減するかを数式で表現してみました。具体的には、感染していない人が多いほど感染する確率が高くなる、感染して自由に動いている人がPCR検査などを受け隔離される割合は一定、と想定して数式をたてました。すると、第1波と認識されている2020年3〜5月あたりの累積感染者数と「隔離された人」の推移がぴたりと重なり、このモデルで初期の感染拡大を説明できることがわかりました。
次に、このモデルを使って今後を予測したところ、接触機会(感染していない人が感染する割合)を減らすよりも、検査の頻度(感染者を隔離する割合)を上げたほうが、感染拡大の封じ込めに効果的である、という予想も導き出されました。

今後、期待される研究は?

別の要因を考慮して数理モデルを立てれば、説明できる現象が増えるかもしれません。例えば第2波、第3波はなぜ起きたのでしょう。「人のつながりの強さ」を考慮してみると良いかもしれません。単純に言えば、会社、学校、地域など、コミュニティの中では感染は広がりやすく、コミュニティとコミュニティの間では感染が起こりにくい。特定のコミュニティ内で感染が広まった第1波のあと、コミュニティ間で感染が起こって、より多くのコミュニティ内の感染によって第2波が起きたのかもしれません。
ここでポイントになるのが、人のつながりの表現方法です。コロナ以前は、つながっているか、つながっていないかの2択でした。しかしコロナ禍では直接頻繁に会う関係、オンラインと対面を組み合わせて会う関係、オンラインのみの関係など、複雑化しているので、人のつながりに重みをつける必要があるでしょう。行動心理学などの専門家と協力すれば、現実に近いモデルが立てられるかもしれません。
また、人々を一様と見なさず、行動特性で分けてモデルを立てることも有効です。シミュレーションに時間はかかりますが、全員に外出自粛を要請するのではなく、このような行動をとる人は外出しても良いなど、きめ細かい対策につながるかもしれません。

メッセージ

今のような時代では、人々は科学に、すぐに生活に役立つことを求めがちです。しかし科学はすぐに役立つことばかりが重要ではありません。特に私の専門の物理学は、いろいろな場面で成り立つ普遍的な法則を探すのが究極の目的です。法則を発見したからと言って、それがすぐに生活に役立つわけではありません。でも、すぐに役立つことは、社会が少しでも変わると、すぐに役立たなくなります。それに対して、普遍的なことは、社会が少々変化しても、ずっと成り立つことなのです。科学のそのような価値を、長い目でみていただけたらと思っています。