研究道具箱 カードと研究

持続社会

鋳型合成法

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研究概要

SUNADA Yusuke

東京大学 生産技術研究所

砂田 祐輔

SUNADA Yusuke

専門分野:機能性金属クラスター科学

研究室WEB

分子の立体構造をコピー

どんな技術?

鉄をどろどろに溶かして「型」に流し込み、冷やして狙った形に固めるように、ケイ素で「型」を作り、適切な数の金属原子を、適切な場所に配置し、狙った性能を持つ化合物を作るのが、鋳型合成法です。

 

化合物の性能はどの元素をどういう構造に配置するかで決まります。中でも、反応性の高い金属の配置は重要です。繊維やプラスチック製品など、身の周りの化学製品のほとんどは炭素、酸素、窒素、水素のみから成り立っており、その構造は比較的自由に操れます。しかし、触媒など特殊な性能を持つ化合物上の金属の配置を自由に操る技術は確立されていません。そこで、炭素と性質が似ており、狙った構造を作りやすいケイ素を使い、ケイ素の立体構造を金属の配置にコピーしようというのです。

 

具体的には、ケイ素とケイ素の結合部が金属原子を1個取り込む性質を利用します。そこを「穴」のように使って金属を埋め込んでいくと、まるで鋳型を取ったかのように、ケイ素化合物の構造と同じように金属を並べることができます。結合部をたくさん作れば、埋め込む金属の数を増やせます。このようにして、金属を欲しい数だけ欲しい形に並べることが可能になりました。

将来はどうなる?

将来、応用が考えられるものの1つが、金属の有効活用です。たとえば、燃料電池のエネルギー変換や自動車の排気ガスの浄化装置などで使われる触媒には、白金やパラジウムなどの貴金属がナノ粒子(原子が数千個集まってボール状になったもの)と呼ばれる形で利用されていますが、貴金属は希少な資源であるため、値段も高く、手に入りにくいなどの難点があります。ところが鋳型合成法で、このナノ粒子の一番大事な構造を切り取った形に貴金属を並べたところ、その使用量を数百分の一に減らすことができたのです。

 

もう1つは、省エネです。たとえば植物の根にある窒素固定酵素は、軽々と窒素分子をアンモニアに変換します。これを現在の技術で人工的に行うには、数百度の熱と数百気圧が必要で、大量のエネルギーを使います。しかし、もし、この酵素の中で重要な役割を果たしているモリブデンと鉄を人工的に同じ形に並べられれば、窒素固定酵素を再現し、常温と大気圧でも窒素からアンモニアを作ることができるようになるかもしれません。

他のカードとの相性は?

例えば…

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触媒表面で起こる現象の理論と実証がタッグを組み、触媒開発が加速。

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鋳型合成法で作った金属クラスターと光触媒を組合せ、省エネに効く新触媒が誕生。

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金属クラスターを完全に均質に平面に並べ、重ね、新機能材料を開発。

鋳型合成法

鋳型合成法で金属(Pd)をケイ素(Si)の間に埋め込み、雪の結晶形のように並べることで、活性の高い触媒が誕生。