研究道具箱 カードと研究

持続社会

表面・界面現象

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研究概要

FUKUTANI Katsuyuki

東京大学 生産技術研究所

福谷 克之

FUKUTANI Katsuyuki

専門分野:表面界面物性

研究室WEB

物質が接する境界で、特殊な現象を起こす

どんな技術?

界面とは、2つの異なる物質が接している境界のことをさします。片方が空気や真空の場合には表面と呼ばれ、表面も広い意味で界面の一種です。界面は物質内部とは環境が異なるため、異なる性質を示します。たとえば、良好な電気伝導や有用な化学反応を起こすことができます。二酸化炭素から燃料を合成したり、クリーンなエネルギー源として注目される水素を生成・貯蔵したりと、これまでの技術では実現が難しい現象を起こす可能性を、界面は秘めています。

 

電気伝導や化学反応の起源を解明するためには、界面に並ぶ原子のふるまいを捉えることが欠かせません。これまで界面に並ぶ原子を観察することは困難でしたが、近年の実験技術の進歩により、原子がどこにいてどのような動きをするのかを観測できるようになってきました。

 

界面を工夫した新技術の例として、水素貯蔵が挙げられます。現在、水素を貯めるには気体の水素を高圧にしたり、冷やして液化したりする必要がありますが、エネルギーもコストもかかります。ある種の金属は、多量の水素を内部に吸蔵するものが知られており、新たな水素貯蔵法として注目されています。しかし、貯めたいときに貯め、使いたいときに取り出すことが難しく、課題となっていました。そこで私たちは、金属表面を利用して水素の貯蔵と取り出しを制御する方法を考えました。金属表面に、少量の不活性元素を混ぜたところ、表面の性質が一変し、水素を効率よく金属内部へと誘導することに成功しました。さらに、金属表面に一酸化炭素分子を吸着させることで水素を内部に閉じ込め、必要な時に水素を取り出すことにも成功しました。

将来どうなる?

表面・界面の研究は未開拓で、物理、化学、生物など、これまでの学問分野にとらわれない横断的な研究が求められています。物理の研究者が新たな磁性や超伝導を発見する一方で、化学の研究者が有用な物質を生み出す触媒反応を見つけ、これらの研究が融合することで、人類が思いもしなかった現象が見つかるのではと期待されています。

 

私が注目しているのは、クリーン燃料としても注目される水素です。私たちのグループでは、水素の位置と動き、さらに水素が持つスピンの動きを観測する技術を独自に開発しました。これらの実験技術を駆使することで、表面で水素を生成する化学反応や、水素がもたらす高温超伝導の機構を解明し、持続可能な社会に貢献できると考えています。

他のカードとの相性は?

例えば…

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水から水素が生じる原理をつきとめる。

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静電気を保持する表面を合成し、発電量アップ。

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隙間を流れる水とコンクリート表面の相互作用を理解し、破壊を防ぐ。

界面現象

他の分子をあらかじめ吸着させておくなど、金属の表面に手を加えることで、水素の貯蔵と取り出しの効率を制御することができる。