研究道具箱 カードと研究

持続社会

自律型海中ロボット

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研究概要

MAKI Toshihiro

東京大学 生産技術研究所

巻 俊宏

MAKI Toshihiro

専門分野:海中プラットフォームシステム学

研究室WEB

全自動ロボットが海中の生物や鉱物資源を探査

どんな技術?

「自律型海中ロボット」とは、全自動で海の中を探査するロボットで、AUVAutonomous Underwater Vehicle)と呼ばれています。これまではROVRemotely operated vehicle)と呼ばれる、ケーブルでつないで船から遠隔操作する海中ロボットが広く使われてきましたが、船から離れた場所で作業ができないなど、多くの課題がありました。一方、自律型ロボットは、内蔵コンピューターを持ち、人間が操作しなくてもセンサーで周りの状況を判断して動くことができることが大きな違いです。

 

国内でも次第に認知されてきており、海上保安庁が海底の地質調査、自衛隊が機雷の捜索に利用しているほか、民間企業や大学での活用も始まっています。

 

AUVの技術は自動運転技術と似ています。ただし、陸上では光や電波を用いて周囲の環境を詳細に把握できますが、海中ではこれらが伝わりづらく、使えません。超音波や限られた視野を頼りに、未知の環境の中を手探りで進まなければなりません。

 

現在取り組んでいるのは、複数のAUVの連携、海底基地での長期滞在、そして低コスト化です。陸上から海底ケーブルを延ばし、充電とデータ抽出ができる基地を作る計画もあります。センサーの機能を絞り込むことでAUV1台あたりのコストを抑え、その分、複数のAUVを運用し、調査範囲を広げたいと思っています。また、これまでのAUVの調査対象は海底や人工物など動かないものが中心でしたが、AUVに自然環境で暮らす生物を追跡させて、生態を調べる研究も進めています。2022年7月にはAUVが模型のウミガメを追跡する実験を行い、成功しました。

将来はどうなる?

将来的にはこの技術を用いて、地球全体の海底を画像によってマッピングできるでしょう。いわば海底版「グーグルアース」です。その結果、新たな生物や未知の古代文明の遺物など、ワクワクする発見があるかもしれません。また、たとえば複数のAUVを連携させてウミガメの一生を追うなどして、これまで謎に包まれていた海洋生物の生活史を明らかにできる可能性もあります。

 

また、資源分野では海底の油田や鉱物資源、エネルギー資源などの探索、食料分野では水産資源、養殖漁業の魚のモニタリングに用いることもできます。気候変動に関しては、海水温上昇やサンゴ礁の調査に活用できます。また、海洋プラスチックごみを調査するだけでなく、ロボットによる回収が可能になるかもしれません。そうした単調な作業を人間が行うのは非常に困難ですが、ロボットは長時間に渡って同じ作業を続けられるというメリットがあります。未知の世界だった海を、つぶさに理解することができるようになるのです。

他のカードとの相性は?

例えば…

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水質センサーを小型化し、AUVの小型化や省エネへ

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熱水噴出孔と周りの海水の温度差で発電し、AUVの海底基地の電力に利用

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高温になりがちな機器群を冷やして正常に機能させる

AUV HATTORI(ハットリ)による海底観測の様子 (2021年環境省西之島総合学術調査事業)