研究道具箱 カードと研究

安全・安心

気象予報

道具箱_20191015_表_86_54_center25 道具箱_20191011_裏_86_5425

研究概要

YOSHIKANE Takayuki

東京大学 生産技術研究所

吉兼 隆生

YOSHIKANE Takayuki

専門分野:領域地球システムモデリング

研究室WEB

人工知能を使い、予報精度を向上

どんな技術?

台風はこの後、どこに向かうの?気候変動は、私たちが住んでいる地域にどのような影響をもたらすの?誰もが知りたい情報です。これらの問いに答えるのが「気象予報」ですが、実は局地的なものから台風や季節風など大規模なものまで、さまざまなスケールの現象を対象としています。そして、正確に気象を予測するには、これら規模の異なる現象を紐づける必要があります。例えば、地形や植生分布、都市の土地利用状況などは、大きな気象現象と影響を及ぼし合うため、これら局地的な3次元空間情報も考慮することが必要なのです。

 

しかし、物理法則に基づいて将来の大気状態を予測する「数値モデルシミュレーション」に、土地ごとの情報を組み込むには、膨大な計算量と手作業による細かい調整が必要であり、これが予測誤差の原因となってきました。

 

そこで近年活用が進むのは、人工知能(AI)です。まず、AIにシミュレーション結果と実際の観測値のデータを渡します。するとAIはその関係性を学習します。そして、これまでの傾向を参考に、シミュレーションの誤差を修正し、気象現象を予測します。例えば、広域での気象パターンから、局地的な気象を推定する方法や、ナウキャスティングと呼ばれる、数時間先までの短期降水予測も、開発が進んでいます。

 

ただし、AIは万能ではありません。学習するデータに偏りがあると、誤認識・誤判断が起こります。また、AIの判断基準も人間には分かりにくく、問題が起こった場合の適切な対応や改善が難しいのが現状です。

将来、どうなる?

正確な予測情報をすばやく提供するために、AIがさらに重要になるでしょう。天候に左右される農業、水産業、物流、エネルギー、レジャーなどのビジネスで活用が進むほか、気象状況を原因とする頭痛など、健康問題を抱える人向けに有益な情報を提供できるようになります。

 

また、人工衛星のデータと組み合わせることにより、さらにリアルタイムで細かい3次元空間情報を得ることも可能になるかもしれません。得られた情報とメタバース技術を用いて、気象上の最悪の事態を仮想空間で「体験する」し、今まで気づきにくかった気象予測システムや都市構造の弱点を見つけ出せるかもしれません。自然災害の被害を劇的に減らすと同時に、安心安全なまちづくりができるようになるでしょう。「気候変動により、私たちの地域の気象がどうなるのか」についても最悪の事態を想定できれば、具体的な対応策が見つかるかもしれません。

他のカードとの相性は?

例えば…

道具箱_20191015_表_86_54_center10 道具箱_20191011_裏_86_5410

気象予報とともに、避難によって生じる別の健康リスクやコストなども提供し、判断をサポート。

道具箱_20200605_表_86_54_center27 道具箱_20200605_裏_86_5427

過去の気候変動による自然環境や人間社会への影響をデジタル上で再現し、対策をみんなで検討。

渡されたシミュレーション情報(Simulation)をAIが高解像度化(AI)。実際の観測データ(Observation)とほぼ一致しています。