研究道具箱 カードと研究

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半導体フィルム

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研究概要

FUJIOKA Hiroshi

東京大学 生産技術研究所

藤岡 洋

FUJIOKA Hiroshi

専門分野:光電子機能薄膜

研究室WEB

薄くて柔らかい半導体で、モノを知能化

どんな技術?

半導体はスマホやパソコン、太陽電池、LEDに使われるなど、現代社会に必要不可欠な物質です。半導体は、原子が規則正しく並んだシリコンの結晶の表面に、リソグラフィと呼ばれる技術を使って回路を刻み込んで作られます。機能する部分は全体の厚みのたった1/1,000程度とごく表面だけですが、堅くて脆いため1ミリほどの厚みを持たせることが常識でした。加えて、高価で面積が小さいという制約もあり、応用範囲が限られていたのも事実です。

 

ところが最近、基板上に目的のパターンで原子を堆積させるスパッタリングという方法を使って、1,000分の1ミリという極薄の半導体を作ることができるようになりました。これが半導体フィルムです。今までは半導体の製造に1,000度以上という高温が必要だったため、その温度で溶けてしまうガラスや樹脂などは基板の材料には使えませんでしたが、この方法を使うと100200度でも製造できるため、材料の選択肢が大きく広がります。例えば、半導体フィルムを樹脂フィルム上に作れば、軽量かつ柔軟で透明といった、今までにない特徴をもつ半導体を、安価に大面積で生産できるようになるのです。

 

半導体フィルムによって演算能力自体が速くなるわけではありませんが、ガラスや建物、衣類、プラスチックなどこれまで想像もできなかった材料に半導体を組み込むことができるようになります。IoTのように世の中を大きく変える起爆剤になると期待されています。

これからどうなる?

あらゆるものに半導体が組み込まれると、自身がセンサーとして情報を集め、コンピュータとして演算するようになり、社会の「センサー化」と「知能化」と呼ばれる現象が起きることでしょう。半導体は何でもできる存在です。計算も記憶もでき、電気を光に変換するLEDやディスプレイなども半導体です。また、光を電気にする太陽電池も半導体なので、将来はエネルギーを与えなくても自分で発電し、動いて、考えて、情報を集め、お互いに情報をやり取りするようになるでしょう。身の回りのあらゆる道具が知能を持つことで、パソコン以上の存在になるのです。例えばホワイトボードが自分で演算をし、記憶し、撮影し、情報を送受信するようになるかもしれません。

 

SFで描かれているような未来を不気味に思う人もいるかもしれません。もちろんロボット兵士の製造など、ネガティブな方向に使われてしまう危険性も否定できません。しかし、大事なのは使う側の人間。いろいろなセンサーから大量の情報を集めることで、社会をもっと円滑に運営できるようになります。例えば、日本の人口がさらに減少し、高齢化した時、「知能化」した橋などのインフラが自分で自分を点検し、「橋脚が老朽化しているので、そろそろ修理して下さい」と報告してくれれば、人手不足を補う有効なツールになるでしょう。

他のカードとの相性は?

例えば…

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あらゆるモノが通信端末に。

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自動車どうしが情報をやりとりし、事故や渋滞を減らす。

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その場の演算に必要な分だけ、その場で発電。

スパッタリング法で半導体フィルムを開発。