研究道具箱 カードと研究

安全・安心

交通流シミュレーション

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研究概要

OGUCHI Takashi

東京大学 生産技術研究所

大口 敬

OGUCHI Takashi

専門分野:交通制御工学

研究室WEB

刻々と変化する車の流れを予測

どんな技術?

乗っている電車が点検で止まり、振替輸送のバスへと移動したらそちらが大混雑。電車の点検終了を待っていたほうが、早く目的地に着いたかも…。移動中に、混雑でスムーズに動けなくなり、困ったことはありませんか。そうした混雑や渋滞がいつ、どこで起きるのか、渋滞情報の提供や道路の封鎖などによって周辺にどのような影響が生じるのか、どのくらい不利益を被るのかなどを予測する技術が、交通流シミュレーションです。

 

実は、交通の全体像を把握することは、そう簡単ではありません。例えば、首都高速道路で起きる渋滞は、ある日は10キロ、別の日は 3キロ、など大きく変動しています。これまでは、こうした変動がなぜ起こるのかを説明することはできませんでした。しかし、最近になってようやく大量なデータを基に論理的なモデルを構築し、ある程度の精度でシミュレーション予測ができるようになりました。ただし、実際には交通現象は変動しますので、その変化に対応して時々刻々と予測することは、簡単なことではありません。

 

では、渋滞を予測した上で、どうすれば快適な移動を生み出せるでしょうか。人の行動を強制的に制御して渋滞をなくせば、全体として理想的な移動環境を作れるかもしれません。しかし、例えば公的な組織がこうした強制的な’制御をした場合、管理社会に踏み込んでしまう危険性があります。個人の尊厳や自由を侵害する、と反対する人もいるかもしれません。技術の使用に対する、社会的合意を形成する民主的なプロセスが必要になります。

 

また、交通に関するデータをどう管理するかも重要な問題です。自動車に積まれているセンシング機器が集めて、発信している大量のデータが誰のものなのか、それをどう使うのか、使うことでプライバシーを侵害したり、人に不利益をもたらしたりする危険性はないのかなども、検討する必要があります。

将来どうなる?

天気予報のように、「交通予報」がリアルタイムで手元に届く社会がやってくるかもしれません。「事故があったので、1時間後にはあなたが予定している行動にこんな影響が出ます。今日は車ではなく、電車を使いませんか?」などと、予測に加えて、やんわりと提案してくれるのです。判断は個人に委ねられますが、混雑や渋滞による悪影響は抑えられそうです。

 

人々が行動を変えれば、道路の状況は変化します。最適ではなくとも、人々の「きまぐれ」な行動を許容し、センシングし、新たなデータを基にシミュレーションの予測値を修正し続ける――交通流シミュレーションは、リアルタイムのデータ取得と近未来の予測をダイナミックに組み合わせることで、混雑や渋滞の緩和を目指しています。

他のカードとの相性は?

例えば…

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自動車はエネルギーも運びます。交通とエネルギー需要の変動、2つのシミュレーションを統合し、需要と供給を最適化。

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変化する交通状況に応じ、膨大な数の交通状況予測シナリオを瞬時に計算。

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交通流シミュレーションで評価しながら、オフィスや住宅、憩いの場を再配置し、渋滞を緩和。

首都圏一帯の大規模な交通シミュレーションの実行画面の例