研究道具箱 カードと研究

持続社会

レアメタルのリサイクル

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研究概要

OKABE Toru

東京大学 生産技術研究所

岡部 徹

OKABE Toru

専門分野:循環資源・材料プロセス工学

研究室WEB

高価な金属を、手軽に使える金属へ

どんな技術?

使用済みの金属スクラップから、流通量の少ない金属を高純度でとりだす技術です。私は特に、レアメタルの一つである「チタン」を抽出する技術を開発しています。チタンは、軽くて強く、サビにくいと3拍子揃った、とても優れた金属です。

 

チタンが発見されたのは18世紀末のこと。しかし、製錬して使えるようになるまでに、およそ120年もかかりました。酸素と結びつく力がとても強く、現在でも、チタン鉱石から酸素や不純物を除いて高純度の金属のチタンを得るには、大きなエネルギーと長い時間、1トン当たり100万円以上のコストがかかってしまいます。そのため、地殻中で9番目に多い元素で、資源としては無尽蔵にあるにも関わらず、チタンの生産量は大変少なく、世界で合わせても1年にたったの20万トンしか作られていません。供給量が少ないため、チタンは航空機、スポーツ用品、人工関節など、高額な製品にしか使われていません。私は、チタンを、「レアメタル(希少金属)」から「コモンメタル(普遍の金属)」にすべく、鉱石からだけではなくスクラップから、小さなエネルギーで効率良く高純度のチタンを取り出す技術の開発に励んでいます。

 

最近開発したリサイクル技術は、チタンのスクラップを、同じくレアメタルであるイットリウムやセリウムと高温で反応させ、チタンの中に存在する主な不純物である酸素を、効率良く除去するというものです。実は、ここで使うイットリウムやセリウムは、磁石に使うネオジムなど、産業利用価値が高い金属を精錬する際に出てくる副産物で、ともすると「ゴミ」になります。通常は捨てられることも多いのですが、これらのレアメタルが酸素と結びつく力が強いところに着目し、チタンの精錬に役立てました。しかも、従来の技術ではリサイクルのたびにチタンの純度は低下していきますが、この方法だと、純度を高めることさえできます。有害な廃液を出さず、環境にやさしいうえ、鉱石から製錬するよりも使うエネルギーが大幅に少なく、COの発生量を軽減できるなど、良いことづくしの技術です。

将来はどうなる?

チタンの値段が下がれば、自動車などにもチタンが使われるようになります。車体が軽くなり、交通全体に使われるエネルギーが大幅に抑えられるでしょう。チタンの普及が進めば、リサイクル量も増え、循環型の資源になります。さらに、再生可能エネルギーの導入が進んで、利用可能なエネルギーが余る「エネルギー革命」が起これば、精錬やリサイクルのハードルが下がり、身の周りのものが次々とチタン製品に置き換わる社会になるかもしれません。

他のカードとの相性は?

例えば…

レアメタルのリサイクル

軽くて強く、さびにくいチタン製の品々