研究道具箱 カードと研究

持続社会

スーパーコンクリート

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研究概要

SAKAI Yuya

東京大学 生産技術研究所

酒井 雄也

SAKAI Yuya

専門分野:持続性建設材料工学

研究室WEB

植物から生まれる多彩な建材

どんな技術?

スーパーコンクリートは、コンクリートがれきや廃棄食材など要らなくなった「ゴミ」を粉末にして、加熱しながら圧力をかけるだけで産み出せる、新発想の建材・材料です。強度も十分で、一般のコンクリートと同様、あるいはそれ以上も達成できます。

 

一般のコンクリートには、砂などの材料をつなぐ接着剤としてセメントが加えられています。しかし、セメントを作る過程で大量のエネルギーが使われ、大量のCO2が出ます。実に、世界のCO2排出量の8%を占めるほど。セメント不要のコンクリート作りが普及すれば、地球温暖化を防ぐ切り札になるはずです。

 

新発想のコンクリートの材料として、さまざまな素材を片っ端から試してきました。コンクリートがれきだけだと、プレス時に高い圧力(海深1万メートル程度の水圧に相当)が必要です。しかし、廃棄木材の粉末を加えると、植物全般に含まれる「リグニン」が接着剤の役割を果たし、200℃程度で数分間プレス(海深2千メートル程度の水圧に相当)するだけで、スーパーコンクリートの1つ「植物性コンクリート」ができあがります。

 

さらに、一般のコンクリートの材料を一切加えずに、強い建材を作ることにも成功しました。白菜の外側の葉や果物の皮など廃棄食材の粉末に、100℃ほどの熱を加えてプレスしたところ、コンクリート以上の強度を示す建材を作ることができました。糖分が隙間を埋め、食物繊維が補強材としてはたらいていると考えています。材料の香りや色が反映された、多彩な建材の誕生です。

 

現在、屋外で使用できるように耐水性の改良や、製品化に向けた生産方法の研究が進められています。

将来はどうなる?

10年後は、ブロックなど小型のコンクリート製品の代わりや、プラスチックの代わりとしてテーブルや椅子など家具の材料にもなると見込んでいます。スーパーコンクリートは何回でもリサイクルでき、資源を循環させる「循環型社会」への移行を牽引します。白菜で作った歩道を歩き、お茶の香りが漂うテーブルで和菓子を楽しむ日が来るかもしれません。

 

また、可食性と耐久性が両立できるようになれば、グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」に登場する「お菓子の家」も現実のものになります。災害時の非常食としての活用も期待されます。

他のカードとの相性は?

例えば…

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スーパーコンクリートを材料に、思いどおりの形の製品を作る

スーパーコンクリート

コンクリートがれきと廃木材から作製した植物性コンクリート(左)と廃棄野菜・果物(キャベツ、いよかんの皮、玉ねぎの皮)から作製した建材・材料(右)