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水循環の予測

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研究概要

YOSHIMURA Kei

東京大学 生産技術研究所

芳村 圭

YOSHIMURA Kei

専門分野:同位体気象学

研究室WEB

原子の重さの違いを手がかりに、水の行方を追跡

どんな技術?

雨が降り、土に染みこんで川から海へ出る。海で蒸発し風に乗って流れ、また雨になる。これが地球上の水の循環です。私たちはコンピューターの中でそれを再現しようとしています。特に注目しているのは、陸上での水の動き。ダムに貯水して灌漑に使う、地下水を汲み上げる、など人間活動の影響もモデルに取り込んで、精緻な再現を目指しています。

 

これまで構築されてきた海と空(大気)のモデルと合わせると、陸海空がそろいます。温暖化がこのまま進むと、2100年の地球で水はどのように循環するのかを予測することもできますし、数日後の洪水予測にも応用可能です。長野県など、いくつもの自治体と連携して、3日以上前に洪水を予測できる仕組みも作っています。

 

水の移動経路を推定するために、水に含まれる酸素や水素の同位体(原子番号は同じだが、中性子の数が違うために重さが少し違う原子)が役に立ちます。同位体は蒸発と凝結の時に濃度に変化が出ます。重い同位体は凝結しやすく、雨になりやすいためです。例えば、太平洋から来て日本に降った雨と、日本を通り越して中国まで運ばれた雨では、同位体比が違います。こうした観測データから地球上の水の動きを追跡し、モデルを改良しています。

将来はどうなる?

天気予報の精度がさらに高まると期待しています。

 

天気予報で私たちが知りたいのは気温や降雨量ですが、予測のためには、それ以外にも様々な観測データを活用します。観測対象として、水の同位体も含めようと提案しています。すでに、同位体比の観測データを水循環モデルに組み込む「データ同化」という手法を行うと、台風や線状降水帯など極端な気象の予測精度を向上することができるという結果を得ています。分子によって光の吸収に違いがあることを利用した「分光分析」と呼ばれる技術を使い、人工衛星から地球上の水蒸気の同位体を測定し、データ同化を試したところ、精度向上に成功したのです。

 

モデル自体の改良も続けます。例えば、湖や河川の表面からの蒸発や植物からの蒸散の影響は、今のモデルで考慮されていません。川が氾濫して水浸しになった地域から蒸発した水が、周りの地域にもたらす影響など、局所的な水循環も見積もることができるようになるでしょう。

他のカードとの相性は?

例えば…

道具箱_20191015_表_86_54_center22 道具箱_20191011_裏_86_5422

地球上の水蒸気の同位体比を測定し、天気予報の精度を向上。

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細やかな現象もモデルに組み込み、シミュレーション精度を向上。

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古文書の「くずし字」から当時の天気を読み取り、過去の天気を再現。

水循環の予測

地球上の水循環を映し出す球形ディスプレイ